山仕事をしていた人々の仕事納めに欠かせない料理「徳島たらいうどん」は、麦作が中心だった徳島県の内陸部で生まれたご当地グルメ。なんとも不思議なネーミングの「でこまわし」は、地元に古くから伝わる囲炉裏端で食べられた、アツアツほくほくの料理です!
徳島県のご当地うどんとして有名なのが「徳島たらいうどん」。釜で茹であげたうどんを、茹で汁ごと大きな飯盆(はんぼ)に移し、アツアツのまま食べるうどんです。大きな飯盆に入ったうどんを見た人が、「たらいのようなものに入ったうどん」と表現したことから、「たらいうどん」と呼ばれるようになったといわれています。
徳島たらいうどんの発祥の地は、徳島の内陸に位置する阿波市や吉野川市などの土成地方。かつて、その地で山仕事をする人々の仕事納めのごちそうとして、河原でうどんを茹で、みんなで釜を囲んで食べたのが始まりだといわれています。
徳島たらいうどんの特徴は、その“つゆ”。このエリアには宮川内谷川が流れていて、そこに棲むハゼのような川魚“じんぞく”でダシをとったつゆが使われます。風味豊かでコクがあるつゆと、長時間お湯につけても伸びにくいコシのある麺との相性は抜群! 現在では、河原で食べることはありませんが、徳島たらいうどんをメニューとして提供している店舗も多数存在。各家庭で親しまれ続けているご当地グルメといえるのです。
ジャガイモや豆腐、こんにゃく、そば団子などを竹串に刺し、味噌を塗って、囲炉裏でじっくり焼いて作るのが徳島県の郷土料理「でこまわし」。「でこまわし」という名前が付けられたのは、阿波で当時盛んであった人形浄瑠璃に関係しています。“でこ”とは、地元の方言で「人形」を意味します。田楽を囲炉裏でくるくる回しながら焼くようすが、人形浄瑠璃の人形を回しているように見えたことから「でこまわし」と呼ばれるようになったようです。
でこまわしに使われるジャガイモは、徳島では「ごうしいも」や「ほど芋」と呼ばれる、祖谷地方特産のジャガイモが使われ、固めで煮崩れしにくく、田楽に向いているのです。